部屋と日当たりと私

徒然なるままに。

冷静と情熱のあいだ

今月21日の日曜日に引越しを無事に終え、小岩での新生活が始まった。

 

引越し業者はどう見ても学生アルバイトだった。
ピッチピチのアンダーアーマーのトレーニングウェアを着ていた。
『ゆとりですがなにか』に出ていた柳楽優弥とその子分役みたいな二人組だった。

 

台風の心配があったが、当日はちょうど中日でとてつもない猛暑に襲われた日であった。
そんな中、脱水症状起こすんじゃないかってくらい汗だくになりながら、学生たちは懸命に作業をしてくれた。
しかし正直「こんな暑さの中だし、ここでぶっ倒れられたら困るな・・・」と自分の心配ばかりしていた。
あとから自分はあんまり優しい人間じゃないのかもしれないと、ふと悲しい気持ちになった。

 

古い冷蔵庫の回収には家電リサイクル料がかかるからプラス5000円だの、洗濯機の設置作業も追加料金をいただきますだの、家に訪問見積もりに来たミナミの帝王似の営業担当者は説明していたが、学生たちはすべて無料で作業をしてくれた。
普通にいい人達だった。労いのポカリスエットでもあげればよかったかもしれない。

 


そうして新生活が幕開けし、手始めにダンボールの中身をひとつひとつ荷解きし、クローゼットやキッチンを整理していく。
片付け作業日を1日しかとっていなかったため、働き蟻のように休むことなくせっせと動きまくった。
新しい部屋は大きな窓が2つあるので、そのためのカーテンも買いに行かなきゃと気づき、夕方頃にニトリへ行った。
ついでにごつい水切りカゴも衝動買いし、途中のスーパーで2リットルのペットボトルを2本購入したため、帰り道で腕が実質数センチ伸びていたと思う。

 

部屋に到着し「さあカーテンをつけるぞ」と体の疲れとは反比例したテンション高めな気持ちで、電気をつけた瞬間。
あれ?誰ですか?と思うくらいでかい黒ゴキブリが壁に張り付いていた。
辺りの明るさと人間の気配に気づいたゴキブリは、すばやくベッド下の死角に潜り込んでいく。
私はたまらず「まじかよ!」と叫んだ。

 

とりあえず入居手続きの際に同時加入した住宅サポートサービスに電話をかけた。
「恋愛相談以外なら何でも引き受けてくれますよ(笑)」と窓口で不動産屋が紹介していたものだ。
恋愛相談はだめでも害虫駆除はOKだろうと思い、問い合わせてみた。

電話口の返答は「対応できかねます」だった。どうやら不動産屋は嘘をついていたらしい。

 

しかし、室内害虫駆除と殺虫剤撒布も事前にお願いしていたし、内見のときも影すら見当たらなかったのに、なぜゴキブリが出るのだろう?
そんな疑問が頭をよぎったが、考えられるのは引越しの荷物搬入時のタイミングしかなかった。
ドアをずっと開けっ放しにしていたし、絶対に原因はあれだ。
ということは、進入してきたあのゴキブリさえ退治できれば脅威は無くなるはず!

 

ネットで調べたところ、ゴキブリは夜行性なので辺りが明るかったり、物音がすると警戒するからなのか、姿を潜めるということらしい。
とりあえず電気はつけているので音も立てることにした。
夜なので音量を若干おさえつつ、iPhoneきゃりーぱみゅぱみゅの『なんだこれくしょん』のエンドレスシャッフルリピートを開始する。
『ファッションモンスター』とか『にんじゃりばんばん』が流れてくると、ちょっと元気になった。
ちなみに普段、きゃりーぱみゅぱみゅはそんなに聴かない。

 

相変わらず敵はベッドの下から出てくる気配がなかった。
時刻は深夜の1時を回っていた。
新居には害虫対策グッズがあろうことか何一つ無かったため、きゃりーぱみゅぱみゅを流したままとりあえずコンビニへ行くことにした。
「明日(月曜日)を有給にしていて本当によかった・・・」と心底思った。

 

衝動買いしたブラックサンダーアイスを食べながら帰宅すると、敵はカーテン上の壁でうごめいていた。
部屋も明るくしていたし、それなりに音も立てていたのに姿を現していた。
動きめっちゃ早いし、触覚あほほど長くてすごい気持ち悪かった。

 

回収作業のことは後で考えようと思い、とりあえず殺虫剤を容赦なく吹き付けた。
何度目かの正直でクリーンヒットした。
敵は手足をバタバタさせながら壁からまっ逆さまに落下していき、奇跡的にちょうど真下にあったバケツ型の小物入れにゴールインした。

 

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※まさにこれ。

 

このバケツは画鋲入れに使用していたものだったので、さながら針地獄に堕としたかのような追い討ちをかけることができた。
画鋲の中でガサガサ暴れまわる音が聞こえてきたので、とどめに殺虫剤をダイレクトに噴射してやった。
すぐに静かになった。戦いは終わったのだ。

 

安心したので、とりあえずきゃりーぱみゅぱみゅを止めた。

 


もう使いたくない画鋲も一緒にしたままバケツをガムテープで密封し、翌日のごみに出した。
脅威を取り除き、再び快適な居住空間を取り戻すことができた。

安心していたら、今度は小さなチャバネゴキブリがキッチンで発見された。

スキルを積んだおかげで動じることが無かったので、普通に殺して捨てた。


もう虫は我が家に来ないでくれないかな、マジで。